戦いで緩着を打つと敗勢になりやすい

定先局は,あとから打つ白が 6.5 目のコミを出さなければなりません。従って,白は地を囲うのでは足りないので,戦って勝とうとします。
黒は多くの地を取ろうとして,①,③,⑤,⑦ のように打ちました。これに対して,白は ⑧ につけてきました。この後の折衝で,黒は ⑬ と堅く守りました。
この手は,あとで述べるように緩着でした。


緩着はあとから取り戻せない

白は ⑭ と飛んで,左辺の黒2子を分断にきました。
黒は ⑮ と出ます。このとき,白 ⑯ (⑰ の下)が巧い手でした。黒は ⑮ の下に打てばつながることができます。しかし,白に ⑰ と打たれると,下辺と左辺に大きな地をとられます。
やむを得ず,黒は ⑰ と遮って,白が ⑱ にきたとき ⑲ に当てました。あとは,手順のように進みました。


左辺の黒が生きるためには,ほぼ必然の手を打つしかありません。
下図のように,最低限の2眼で辛うじて生きました。


この後,白に右辺の抑えに廻られました。あとは寄せを残すのみです。お互いに寄せ合って,終局になりました。


最終的に,左側の終局図で確認しましょう。
黒地 14 目,白地 21 目で,白が 6.5 目のコミを出して,半目の勝ちです。

戦いでは緩着を打たず最善をめざす

前述したように,黒 ⑬ は緩着でした。この手では,黒はどう打つべきだったでしょうか?
下図の ① のように打つのが最善でした。黒は,後になって,ここに打っていますので,⑬ に打ったために一手遅れたことになります。戦いでは,一手の遅れは致命傷になります。


仮に,この後の手順が,対局図と同様に進んだとしたとき,下図のように,すでに ① に打ってあるので,⑰ に打つことができます。これが一手の差となります。